2020年東京オリンピックのエンブレムマーク選定に際して、あるデザイナーのデザインに関する著作権侵害の有無が話題に挙がりました。特に、デザイナーがデザインの創作を行う場合においては、他人の著作権の侵害つまりデザインの模倣等と言われないようにすることが先ず、重要となります。さらに忘れてはならないのが、デザインを提供するクライアントとのトラブルも多く発生しているという現実です。これは、創作したデザインの著作権の帰属を発注契約、譲渡契約等できちんと取り決めていないことがほとんどのケースの原因となっています。
(1) デザインを保護する権利
デザインと一口に言っても対象は多岐にわたりますが、デザインを保護する知的財産権としては、意匠権、商標権、著作権が主として考えられます。産業財産権に分類される意匠権、商標権は、特許庁へ出願して、審査を受けた後、有効性が認められれば登録査定となって登録証が発行されます。一方、著作権は著作物が創作された時に発生する権利であるため、出願して登録を受けるという手続がありません(※別目的の登録制度はあります)。ちなみに主管する官庁も特許庁ではなく、文化庁となっています。
(2) 著作権のしくみ
著作権は大きく「著作財産権」と「著作者人格権」とに分類されます。さらにそれぞれの中に細分化された権利(支分権等とも呼ばれます)が包含されています。先ずは、このような著作権の概要と保護対象等を知ることが重要です。そのうえで、どのような行為を行った場合に、侵害(模倣等)となってしまうのかを把握しておくことが重要です。
(3) 契約の重要性
クライアントとのトラブルを防止するために、創作したデザインに関する著作権の帰属について、契約を取り交わして明確にしておくことが重要です。例えば、発注を受ける際に「発注契約」に記載する、あるいは納品する際に「譲渡契約」に記載するといった方法が考えられます。簡易な書式であっても構いませんので、書面で残しておくことが重要です。