知財関連コラム

特許実務雑感56

 特許権侵害が成立するか否かは被疑者の行為が、「正当権原なき第三者が業として特許発明を実施」に該当するか否かで判断されます。所謂演繹法により論証が行われます。大前提(条文)があって小前提(事実)を当てはめつつ結論を導く、という作業が行われます。従って、特許請求の範囲の記載された発明を構成要件(A,B,C…)に分け、これと第三者の実施品(実施方法)の構成要素(a,b,c…)を対比して結論を導きます。第三者の実施品(実施方法)が特許発明の構成要件全てを包含する場合、第三者の実施行為は権利侵害と認定されます(権利一体の原則)。よって、構成要件の一部一致は非侵害という考え方を採用します。尚、発明の同一性は、完全同一である必要はなく、実質的同一で足ります。実質的同一とは、発明どうしが完全に一致するほか、周知・慣用技術の付加・転換・削除を含み、作用効果に変わりがないことを言います。例外として、構成要件が部分一致であるにも関わらず、権利侵害が成立する場合があります。一つは均等侵害、二つめは間接侵害です。いずれも例外であるため、侵害訴訟で認められるケースは少なく、判例も少ないというのが現状です。均等侵害というためには、権利者は、相違点が特許発明の非本質部分であること、置き換えても特許発明の目的を達することができ同一の作用効果を有すること、置き換えが容易にできたこと、を立証する必要があります。これに対し被告は公知技術と同一であること又は公知技術から容易に推考できたものであること、意識的除外に該当することを立証して争います。また、間接侵害が成立するためには、被告製品が、特許製品の専用品に該当するか、特許発明の課題解決に不可欠な重要な部品であることを要します。

弁理士 平井 善博

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