知財関連コラム

特許実務雑感55

 特許権の活用を考える場合、自ら実施する場合もありますが、より資本力・技術力・営業力のある第三者にライセンスして収益を得るビジネスモデルも考えられます。この場合、実施権の種類として、専用実施権と通常実施権の二種類があります。専用実施権は、設定範囲内では特許権者も実施制限される強い物権的権利であり、特許権者と人的信頼関係が高い第三者に許諾される傾向にあります。これに対し、通常実施権は、同一技術についてより広く第三者に実施許諾するもので、債権的権利と言われています。通常実施権には契約条件によって二種類あり、特定の第三者のみに許諾する独占的通常実施権と広く第三者に許諾する非独占的通常実施権があります。独占的通常実施権は例えば外国権利者の日本総代理店のような立場と考えることができる。独占的通常実施権にも、権利者の実施を制限する完全独占的通常実施権と、権利者の実施も認める不完全独占的通常実施権がある。非独占的通常実施権の場合は、定めがなければ権利者も通常実施権者も実施することができる。実施権を設定するのは契約によりますが、内容的(例えば物の製造のみ、販売のみ等)、時間的(契約時より3年間等)、地域的制限(例えば関東エリアのみ等)を設けることができる。近年、通信技術のCDMAのような標準化技術について特許取得した場合には、利用を促進するため、ランド条件(公平、妥当かつ差別のない条件)でライセンスするか、トヨタ社の燃料電池車の特許のように広く普及させる意味で無償ライセンスする場合もあります。特許権が共有にかかる場合、このラインセンス許諾について相手方の承諾が必要になるので、良い技術であっても休眠状態になるおそれがあることに留意されたい。

弁理士 平井 善博

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