特許実務雑感52
令和元年意匠法改正で導入された建築物の意匠と内装の意匠について補足説明します。前者は、物品意匠の例外として導入され、後者は、組物の意匠と同様に一物品一意匠の例外として導入されています。導入の背景としては、技術力のみで競合他社との差が付きにくい状況下で、デザインやブランド構築力により産業競争力を高めようとする意図があります。建築物の意匠であるから不動産(土地及び定着物)が登録対象に含まれます。特有の登録要件として、継続的に土地に固定して使用されることを要する。また創作物であるので人工構造物が登録対称となるが、土木構造物(ダム等)も含まれる。よって、動産(仮設テント等)や人工的でないもの(自然界に存在する山等)は除かれる。また内装の意匠は、不動産に関する構成要素を含みかつ複数の物品(床、壁、家具、照明等)が登録対象に含まれる。特有の登録要件として、店舗、事務所その他の施設の内部(乗り物も含む)に該当すること、複数の物品、建築物又は画像により構成されること、内装全体として統一的な美観(形態の統一、観念の統一等)を有すること、を要する。物理的に分断された二以上の空間を有するものは除かれるが、仕切り壁が透明であるなど一の空間と認識される場合はよい。意匠に係る物品の類比判断は、用途及び機能に共通性が認められるものは類似と判断される。例えば建築物の「住宅」と物品意匠の「組立家屋」は類似物品とされる。内装の意匠は内部に人が一定時間過ごすためのもので共通しているため、全ての内装の意匠に係る物品は建築物や物品意匠と類似物品と判断される。例えば内装の意匠の「住宅の浴室の内装」、物品意匠「ユニットバス」、建築物の意匠「住宅」(浴室)は互いに類似関係が成立しうる。
弁理士 平井 善博