特許実務雑感46
国内優先権制度は、先の出願とより整備された後の出願で置き換える制度です。先の出願から1年以内であれば、利用可能です。この制度を最もよく利用する場面は、先の出願内容に技術事項(例えば新たな実施例)を加える補正をしたいが新規事項追加になるため、補正できない場合です。また、実施例を補充する場合の他に、記載内容(特許請求の範囲、明細書、図面)を書き換えたい場合にも利用します。優先権とある通り、外国出願する場合のパリ条約上の優先権制度に倣って、後の出願の記載事項であって先の出願にも記載された重複事項は、新規性、進歩性等の特許要件の審査の基準日を先の出願の時点で判断する制度であるため、不利は受けないというものです。よく勘違いされるのは、国内優先権主張出願の出願日は先の出願日に遡ると思われがちですが、出願日は現実の出願日のままです。但し、出願公開の起算となるのは、原則として先の出願日から1年6月経過後となります。要は、後の出願は、新たな出願ですので、出願内容を全面的に見直して書き換えることができます。よって、特許請求の範囲を上位概念に拡張したり、実施例を補充して対応する請求項を追加したりすることができます。国内優先権は、先の出願から1年以内と、外国出願のパリ条約の優先権制度と同じ期間設定ですので、外国出願をする場合に、先の出願内容を見直す意味でも重要な制度と言えます。即ち、より整備された内容で外国出願を行うために重要です。この場合には、先の出願と後の出願の双方を優先権主張の基礎とする必要がありますから、翻訳準備期間も考慮すると、できるだけ早めに国内優先権主張出願を終えている方がよいことになります。
弁理士 平井 善博