知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標 商標における小分け販売

 ある小売業者が、大きな容器に入っている真正商品(もともと大きな容器に入った状態であって、偽物ではない商品)を販売しているが、小売業者が顧客の要望等により商品を小さな容器に小分けして販売することは認められるかどうか、という問題があります。
 昔の判例ですが、ココアの小分けについての事件について説明します。大袋入りのココアを販売している小売業者が、ココアメーカーの断りなしに大袋入りのココアを小さい袋に小分けして販売した際に、この小さい袋にはココアメーカーの登録商標のラベルを貼りつけていたということです。
 結論から言いますと、ココアそのものは真正商品であっても、小さい袋に登録商標を付して販売することは、商標権者の業務上の信用を阻害することになり、商標権侵害に該当するというものです。
 では、小分けした際に、元々の登録商標を付けなければよかったのではないか、と思われるかもしれませんが、もし登録商標を付けずに単なる無地の袋に入れて小分け販売しようとしても、消費者はどこのメーカーのココアか判別できないため積極的に購入しようとは思わないでしょう。このため、小売業者は小分けした袋にココアメーカーの登録商標のラベルを貼りつけざるを得なかったと思います。
 ちなみにココア事件の後にも同様の事件があり、肥料を小分け販売した例があります。この肥料の小分け販売では、小分けした袋そのものには登録商標を付けていなかったのですが、販売場所に登録商標を付けた定価表を設置していたというものです。このケースも商標権侵害であると判決が出ました。
 このように、小分け販売する場合は製造メーカーの許可を得るなど慎重に行う必要があります。

弁理士 傳田 正彦

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