ビジネスに役立つ商標 文化的所産の商標登録その1
伝統的な価値を有する文化的な財産、例えば工芸品、遺跡、演劇、音楽など(これらを文化的所産等といいます)、が商標登録出願された場合にはどのように取り扱われるでしょうか。
そもそもこれら文化的所産等は、国家としても貴重な資産や資源であり、各地域においても観光資源として地域おこしなどが行われている現状があります。したがって、特許庁では公益的観点からこれらに独占権たる商標権を付与すべきか検討することになります。
例えば「大般若長光」は国宝に指定されている刀ですが、「大般若長光」という文字で指定商品「刀剣、おもちゃの刀剣」、指定役務「刀剣の展示」等を指定している場合には、商品の品質又は役務の質を表すものとして拒絶されます。
「クフ王のピラミッドの図形」は、世界遺産登録されている著名な遺跡ですが、これを指定役務「旅行の手配」に指定している場合には、役務との関係において需要者は旅行の目的地を表したものと判断するので、役務の質を表すものとして拒絶されます。
一方、「アンコールワット」は世界遺産登録されていて著名な遺跡ですが、これを指定商品「電動ドリル」を指定した場合には、商品の品質とは全く関係ないため、登録可能性があるということになります。
このように、文化的所産に関する商標の審査においては、文化的所産の知名度や、文化的所産と指定商品又は指定役務との関係性、指定商品又は指定役務の取引の実情を勘案して判断されます。
弁理士 傳田 正彦