知財Q&Aコーナー(5)
Q:特許と実用新案の違いを教えて下さい。
A:どちらも、「技術的なアイディア」を保護する権利である点では共通しているのですが、多くの相違点があります。
例えば、権利期間をみますと、特許は出願から20年であるのに対し、実用新案は10年です。また、実用新案法では、保護対象となるアイディアが「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」に限定されていますので、特許法で保護される「方法」や「材料」あるいは「プログラム」等は実用新案の保護対象とはなりません。
また、最も大きな相違点の一つと言えますのが、審査を行うか否かです。具体的には、特許制度では、発明の新規性(新しさ)や進歩性(容易に考え出せないこと)及び明細書の記載不備等の特許要件について、厳格に審査してから特許を付与する「審査制度」を採用しています。これに対して、実用新案制度では、早期登録の観点から出願人名の記載があるか等、形式的な審査のみを行って、新規性・進歩性等の実態的な内容の審査は行わない「無審査制度」を採用しています。
このため、登録された実用新案が有効かどうかの判断は、別途、特許庁に対して「実用新案技術評価書」を請求して、その評価を見て有効性を判断しなくてはなりません。また、実用新案権を行使する場合には、実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければなりません。特に、この提示やその他相当の注意をしないで警告や権利行使を行った後に、実用新案登録が無効になった場合には、警告や権利行使をしたことにより相手方に与えた損害を賠償する責めを負う場合がありますので、注意が必要です。なお、特許の場合には審査を経た上で登録されますので、実用新案のような制約はありません。
弁理士 岡村 隆志