知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  著名商標と出所の混同

 日本のある企業は、小さい「CLUB」の文字を上段に配置し、下段に「MOET」(ただしOは、バラの花の図形)を配置した商標を指定役務43類の「飲食物の提供」について登録しました。これに対して、モエ・エ・シャンドン社(以下、申立人)が、自社の高級シャンパンを表す周知著名な商標である「MOET」と高い類似性があって出所混同を生じる(4115号)こと、外国の著名商標を不正目的で取得した(4条1項19号)ことを理由に異議申し立てを行いました。4115号は指定商品・指定役務が非類似であっても引用商標が著名である場合に適用されます。
 特許庁の結論としては、申立人の使用に係る「MOET」(「E」にはトレマがある。)の商標は、申立人商品の略称として相当程度知られており、独創性の程度は高く、本件商標とは類似性の程度は高く、また、その指定役務と申立人商品は需要者を共通にし、一定程度の関連性もあるから、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、申立人商品との関連を連想又は想起し、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあると結論付けました。
 一方で、その登録出願時において、不正の利益を得たり、申立人に損害を与えるなど、不正の目的があったとまでは、認めることはできないとして、4条1項19号に対しては該当しないと結論付けました。
 このように、本件商標は、「O」の文字をバラの花として直接的に「MOET」の文字ではなく、指定商品・指定役務が非類似であっても、著名な商標と出所の混同が生じるおそれがあるとして、取り消されました。

弁理士 傳田 正彦

トップへ戻る