特許実務雑感74
令和3年度の特許法改正の続きになります。(9)国際意匠・商標登録出願の登録査定謄本送達の見直し:郵便事情によらず国際登録簿への記録をもって登録査定謄本の送達とみなされます。背景には、国際郵便事情の遅滞により国際意匠登録出願、国際商標登録出願の日本国特許庁から海外の出願人に対する登録査定の謄本の送達が滞る不利を解消することがあります。(10)国際商標登録出願の個別手数料の二段階納付の廃止:マドリッド議定書に基づく国際商標登録出願を行う場合、各指定国に対して当該指定国が定める個別手数料を納付する方法が、国際出願時に全額納付する一括納付と国際出願時と指定国における設定登録時に分けて納付する二段階納付のいずれかを採用していましたが、一括納付に統一されました。背景には二段階納付する国が日本を含めて3か国と少数であったことがあります。(11)特許印紙予納の廃止:特許料等の支払い手段として、利用者が一定金額を予め予納しておき、手続料金納付に充てる制度が用いられてきました。このときの予納方法は、郵便局などで販売されている特許印紙によって行われていました。これが利用者にとって大きな事務負担となっているうえに、特許に関する手続きをデジタル化する必要性も生じていました。そこで、特許印紙による予納制度を廃止し、現金予納制度に一本化する改正が行われました。この結果、銀行口座振替による料金納付やクレジットカードによる料金納付が可能となりました。今回の法改正は、コロナ禍におけるユーザー保護の観点、国際調和の観点、デジタルトランスフォーメーションの推進という観点から様々な改正が行われております。
弁理士 平井 善博