特許実務雑感73
令和3年度の特許法改正の説明の続きになります。(6)口頭審理期日における当事者間及び参加人の出頭のオンライン化:無効審判等の審理は口頭審理が原則ですが、審判長の判断で、ウェブ会議システムによる手続きを行なえるようになります。通常は特許庁の審判廷で請求人、被請求人が出廷して口頭審理が行われますが、コロナ禍や遠隔地に居住している当事者の利便性が図られることになります。これは特許異議申し立ての審理における証拠調等においても準用されています。(7)災害発生時における割増特許料の免除:特許権者は第4年以後の各年分の特許料を納付期間経過後6月以内であれば追納することができ、その際には通常の特許料と同額の割増特許料を支払う必要があります。この割増特許料ですが、大規模感染症、大規模災害の発生といった特許権者の責めに帰することができない理由によって納付期間を経過した場合には、割増特許料の納付が免除されます。背景には、特許権者にやむを得ない事情まで割増特許料を支払うのは不合理であるとの批判があります。(8)国際意匠登録出願の新規性喪失の例外適用証明書の提出方法の拡充:日本を指定国として国際意匠登録出願を行いかつ新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする場合、国際出願と同時に例外適用証明書を国際事務局に郵送又はオンラインで提出することが可能となります。従来は、国際事務局が意匠を公表した日から30日以内に日本国特許庁長官に例外適用証明書を提出することが必要ですが、提出する機会が増えたことになります。
弁理士 平井 善博