特許実務雑感51
今回は令和元年意匠法改正で変更された関連意匠の活用について説明します。関連意匠制度は、同一出願人による同一デザインコンセプトに基づくバリエーションの創作を保護する制度です。要するに同一出願人が創作した複数の類似する意匠を保護する制度です。この関連意匠制度は、自己の登録意匠の類似範囲を確認するのに役立つと共に時代と共に改変されるデザインバリエーションの創作を網羅的に保護することができます。この結果、意匠権の保護範囲を厚くすることができ、競合他社に対する牽制効果を高めることができます。また、従前の関連意匠登録出願は、本意匠の出願から登録公報発行までの約1年間のみ出願可能で、出願期間が限られていました。これが本意匠の出願から10年間出願可能となりました。よって、現在登録されている意匠を改変したバリエーションの意匠がある場合、本意匠の出願から10年以内なら後から関連意匠出願することができます。この改正法を利用してぜひ関連意匠の活用を図ってみてください。また、従前は本意匠に類似する意匠のみ保護され、関連意匠のみに類似する意匠は登録できませんでした。関連意匠にのみ類似する意匠は本意匠に必ずしも類似するとは限らず、関連意匠にも類似範囲が存在するため、権利範囲が無限に広がるおそれがあるというのが理由でした。これが、関連意匠にのみ類似する意匠の登録も可能になりました。これによって、時代に合わせてリデザインされるバリエーションの意匠をタイムリーに保護することができるようになります。尚、出願人の登録公知となった本意匠は、審査において先行意匠から除外されるため不利はありません。また、関連意匠の登録時に本意匠の存在が必要ですから、年金未納等により本意匠が消滅していないことが必要です。
弁理士 平井 善博