知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(42)

Q:「ダブルパテント」という言葉を聞いたのですが、どのようなものでしょうか?

A:「ダブルパテント」とは、同一の発明に対して、二つ(もしくはそれ以上)の特許権が付与されることをいいます。また、「重複特許」または「二重特許」等と呼ばれることもあります。(特許権に限定した話ではなく、実用新案権や意匠権でも同様に生じ得る問題です。)
 通常は一つの発明に対して、一つの特許権しか付与されません。例えば、日本等のように特許制度が整備された主要国においては、同一の発明について複数の出願がなされた場合、最も早く「出願」をした者に特許権を付与する「先願主義」を採用しています。以前もご紹介しましたが、米国等においては、過去に、最も早く「発明」をした者に特許を付与する「先発明主義」を採用していた時代もありましたが、現在では、「先願主義」への移行が図られています。
 このような「先願主義」の採用によって、「ダブルパテント」は排除される仕組みとなっています。したがって、制度上は、同一の発明に対して、二つ以上の特許が付与されることはありません。
 しかしながら、国によっては、稀に審査のミス等の原因によって「ダブルパテント」が発生してしまうことがあるのも事実です。
 前述の通り、特許権は独占排他権である以上、当然一つの発明に対しては、一つの特許権のみが付与されるべきです。万一、そのような「ダブルパテント」すなわち同一の発明に対して二つ以上の特許権が付与された状況が生じてしまった場合には、後から出願された方の特許権に無効理由が存在することとなりますので、例えば、無効審判等によって消滅させられる、あるいは、権利行使ができない状況となる、といった扱いになります。

弁理士 岡村 隆志

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