知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(41)

Q:技術者の「カン」とか「コツ」といったものは特許になるのでしょうか?

A:以前の知財Q&Aコーナーにおいても触れましたが、特許法による保護を受けるためには、「発明」に該当することが必要です。特許法において、「発明」は「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定義されています。ここで、「技術」と言われるものは、知識として他人に伝達できる客観的なものでなければならないとされています。
 ところで、技術者の「カン」とか「コツ」と呼ばれるものは、一般的には「技能」等と称せられていますが、客観的に他人に伝達できる類のものではなく、個人の熟練によって到達できるものです。このような「技能」は、仮に第三者が技術者の教えるところに従って実施しても、同じように目的を達成することは困難であると言えます。
 以上の理由から、「カン」や「コツ」といったものは、「技術的思想」には該当せず、つまり、特許法上の「発明」ではないため、特許権を取得することはできないという結論になります。
 具体的な例として、特許庁の審査基準には、次のような説明が記載されています。

(例)「ボールを指に挟む持ち方とボールの投げ方に特徴を有するフォークボールの投球方法」

 この例は、個人の熟練によって到達し得る「技能」であって、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如している、すなわち、「技術的思想の創作」ではないとの説明がなされています。したがって、上記の説明通り、特許法による保護を受けることはできません。(参考文献:特許法概説/吉藤幸朔著、特許庁審査基準)

弁理士 岡村 隆志

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