ビジネスに役立つ商標 販促品(ノベルティグッズ)について
自社の商品やサービスを宣伝・広告したりするために、販促品を配布することがしばしば見受けられます。販促品は、無料で配布することが一般的です。一方、商標法における商品とは、「商取引の目的となりうべきもの」と定義されています。
商標法における商品の定義からすれば、販促品は商取引の目的となる物ではないので、販促品は商標法における商品には該当しないのではないかと考えられます。
この点について裁判で争われた事件が過去にありました。この事件では、楽器の製造販売を行っているA社が、Tシャツ、トレーナー、ジャンパー等に「BOSS」の文字を付して顧客に無料配布しました。A社は、楽器について「BOSS」の登録商標の所有者であるC社から「BOSS」の使用許諾を受けています。
B社は「被服」について「BOSS」の登録商標を所有しており、A社の行為がB社の商標権を侵害している行為であるとして訴えました。
判決としては、A社は楽器の広告宣伝のためにTシャツ等に「BOSS」商標を付して楽器購入者のみに無償配布しているのであって、Tシャツ等は商取引の目的物である商品ではなく、また入手する者は限定されていて市場で流通する蓋然性も認められないため、楽器の単なる広告媒体に過ぎず、A社の行為は商標権侵害には該当しないというものでした。
この判決は、昭和62年のものですが、現在の商取引はインターネットによるものも多くなり、その当時とは商取引の状況が大きく変わってきています。また、上記のような判例があっても同様な訴えをする企業もあり得ますので、販促品についても注意すべきです。
弁理士 傳田 正彦