知財関連コラム

特許実務雑感41

 物の発明について、進歩性なしの拒絶理由を解消すべく複数回補正したが、最終的には拒絶査定がなされたというご経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。こんな場合、権利化を断念するのは容易ですが、何とか保護したいということであれば、実用新案法による保護、或いは意匠法により保護を検討されてもよいでしょう。なぜなら、特許法、実用新案法、意匠法は保護対象の差異はありますが、いずれも創作を保護する法律であり、互いに出願形式の変更を認めているからです。特許出願を実用新案登録出願に変更できるのは、最初の拒絶査定謄本送達日から3か月以内、または特許出願の日から9年6か月を経過する前まで可能です。特許出願から意匠登録出願に変更できるのは、最初の拒絶査定謄本送達日から3か月以内に可能です。こんなことやる意義があるのか?と思われる方もいるかもしれません。しかしながら、実用新案法の保護対象である考案は特許法の保護対象である発明に比べて創作レベルの低いものまで保護されるため、進歩性欠如の拒絶が解消しない場合には有効であること、実用新案法は無審査登録制度を採用しているため、出願すれば形式的要件さえ満たせばすべて登録されることがその理由として挙げられる。また、意匠登録出願は、物品(工業製品)の外観等を保護する制度であるため、技術的に特徴が乏しくてもデザインが斬新なら登録される可能性が高いこと、一旦登録されると保護期間が出願日から25年と長いこと、が挙げられる。創作物の技術的保護を断念しても、外観デザインで権利化すれば、模倣品に対する抑止効があると思われます。拒絶対応としては、反論のみでなく、異法域でも保護を図ることも検討されてみてはいかがでしょうか。

弁理士 平井 善博

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