ビジネスに役立つ商標 アマビエについて
新型コロナウイルスを封じるための妖怪として「アマビエ」が脚光を浴びています。ネット上では2020年2月ごろより話題になっていたようです。妖怪「アマビエ」の絵を書き写し広めることで疫病の流行を防ぐという言い伝えがあるそうです。
そして2020年7月には、電通がアマビエを商標登録出願したということがニュースになりました。調べてみますと、株式会社電通が出願人として、「アマビエ」を標準文字で2020年6月15日に商標登録出願したことは事実のようです。なぜこのことがニュースになったかというと、みんなの物なのに一企業が登録して独占することはおかしい、という理由によるようです。しかし、電通以外にも、「アマビエ」は2020年4月以降10件以上の出願があります。電通だけ叩かれるのは、電通が有名な企業だからということかと思いますが、商標に対する一般的な思い違いもありそうです。みんなの物なのに一企業が登録して独占することはおかしいということについてですが、「アマビエ」は以前からある妖怪の名前であって、確かに誰かの所有物ではありませんが、みんなの共有物ということでもないと思います。
商標権は、指定商品や指定役務における識別標識として使用した場合には、商標権の権利侵害になります。例えば「菓子」を指定商品として「アマビエ」という文字が商標登録されていた場合、菓子の商品名として「アマビエ」の文字を使用した場合には、商標権侵害になります。しかし、それ以外の使用については全く問題となりません。普通の会話や文章内に「アマビエ」を使っても商標権侵害にはなりません。
弁理士 傳田 正彦