知財関連コラム

特許実務雑感34

 記載要件違反の拒絶理由通知の話の続きになりますが、特許請求の範囲の記載が不明確で記載要件を満たしていない、との拒絶理由に際して、多くの場合補正を行ってより具体的な記載に変更します。これにより記載不備の理由は解消できることが多いが、限定した事項が例えば数値限定である場合には進歩性を欠く或いは新規事項追加として、拒絶査定になる可能があります。そもそも数値限定は製品固有の設計的要素であり、数値範囲に臨界的意義が見出せない場合には発明の要部とは見られないため、進歩性がないと認定され易く、臨界的意義とする根拠がない場合、新規事項の追加とみなされるおそれもあります。最近の実務経験では、あるカム機構を使ったロボットハンドの開閉機構に関する発明について、審査官は発明の構成としていかなるカムの形状によってロボットハンドの開閉動作が実現されるか不明であるという点を指摘し、これを受けて補正案を提示してクライアントさんと一緒に特許庁で担当審査官と審査官面接を行いました。審査官は、補正案について、このような当初曖昧表現から具体的な記載に補正を認めると第三者の利益と公平が図れないため認められないと出張しました。しかしながら、審査官は本件出願の従来技術に掲げた先行技術に関する公報の認定を誤っており、その公報には、カム形状と共にロボットハンドの開閉動作が記載されていました。この技術を前提に改良した本願発明について開示不十分と指摘されるのは納得できません。最終的に審査官は意見書にて補正事項は技術常識に相当すると反論することを認め、解決することができました。出願人及び審査官の主張に隔たりがある場合には、審査官面接により誤解を解いて活路を見いだせる場合があります。

弁理士 平井 善博

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