知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(23)

Q:「工業所有権」という権利と「産業財産権」という権利とは、どのような違いがあるのでしょうか?

A:実は、「工業所有権」という権利と「産業財産権」という権利とは、全く同じものを指しています。
 先ず、「工業所有権」という用語は、従来から「特許権」、「実用新案権」、「意匠権」、「商標権」の総称として用いられていました。その様な中で、2002年7月3日、政府の知的財産戦略会議において「知的財産戦略大綱」というものが打ち出されました。(※「知的財産戦略会議」とは、知的財産を戦略的に保護・活用し、我が国の産業の国際競争力を強化することを国家の目的として、それに必要な政策を推進するために設けられた会議です。)
 この「知的財産戦略大綱」は、日本における知的財産政策の基本方針を定めたものであって、その中で、従来の「工業所有権」という用語に替えて、「産業財産権」という用語を使用していくことが謳われています。つまり、「特許権」、「実用新案権」、「意匠権」、「商標権」を総称する新しい用語が定められた訳です。
 また、これと併せて、「工業所有権」に「著作権」等を含めた広い用語として従来より用いられていた「知的所有権」という用語についても、これに代えて「知的財産権」という用語に統一する旨が示されています。
 これを受けて、特許庁では、政府の方針を積極的に実施していくため、法令の改正や、文書上の用語を順次新しい用語に改める対応を実施しました。
 したがって、従来より使用されていた「工業所有権」、「知的所有権」という用語について、使用を禁止されたという訳ではないのですが、現在では、それらに代えて「産業財産権」、「知的財産権」という用語を標準的に使用するという方針になっています。

弁理士 岡村 隆志

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