特許実務雑感22
英国の特許事務所を訪問した後、次に向かったのはドイツ(ミュンヘン)である。なぜミュンヘンかというと、EPO(欧州特許庁)所在地であり、GPO(ドイツ特許庁)所在地でもあり、欧州知財行政の中心地であり、ここに拠点を構える事務所が多いことが挙げられる。歴史的な建造物(マリエン広場市庁舎、レジデンツ、フラウエン教会等)が残るドイツ第3の都市でもある。英国ヒースロー空港からミュンヘン国際空港までは、1時間30分ほどで移動でき、きわめて近い。弊所とドイツ事務所との関係は古く、弊所創立年月日と近く30年以上存続しているところもある。ドイツは、侵害訴訟と無効審判を切り分けて運用するため、審理期間が短く、審理の質も高い国である。特に特許出願と実用新案登録出願の併願ができるため(ダブルパテントの適用なし)、特許出願が係属中に実用新案登録出願をブランチ出願して無審査登録することができ、権利行使し易いように制度設計されている。近年、日本のクライアントを多く扱う事務所では日本人スタッフを募集しているところが多く、ドイツやイギリス等の事務所で、仕事をするのも一考であろう。ドイツ人は、外国からの顧客に対しては基本的に英語で話しかけてくるし、ドイツ語を操る人は早々に打ち解けた話ができる。ドイツは、歴史的な建造物が多く残っている他に、欧州第2の農業国であるため、食文化が多彩である。ミュンヘンはアルプス山脈に近い立地から湧き水が新鮮で特にビールとパンの品質や種類の多さは特筆ものである。また、ミュンヘンは、美術館が多く、芸術が好きな人にはこのうえない町と言えるだろう。英国同様、物乞いをしている移民はミュンヘン市内でもたくさん見かけた。
弁理士 平井 善博