知財関連コラム

特許実務雑感14

 出願発明が特許になるか否かは審査官の審査の結果判明するのであるが、この場合、権利客体として判断される項目は大きく3つである。1つ目は産業上利用できる発明であること、2つ目は新しい発明である(新規性を有する)こと、3つ目は公知発明から容易に発明できたものでない(進歩性を有する)こと。
 産業上利用できる、であるから現実に利用されることは必要ではなく可能性で足りる。シミュレーションの結果でもよいし、所謂机上の空論でもよい。ビジネス関連発明は、いまだ現実となっていないが構想として提案されるケースが多い。また、遺伝子配列などの新たに発見されたものも具体的な利用形態が示されるとこの要件をクリアすることができる。一方、病気の治療方法に関するものは産業上の利用可能性は無いが、例えば再生医療の分野では軟骨再生用移植材のように治療行為に用いられる細胞シートのような物は、産業上の利用可能性が認められている。
 また、発明は創作物であるため客観的な新しさが必要である。即ち、出願前に発明が世界のどこかで、公知・公用・文献等公知になっていれば、新しさは失われる。日常的に使えた物が、後から突如特許が成立して使用できなくなるのは極めて不都合である。新しさは公知発明との同一性で判断され、完全同一だけでなく、実質的同一な場合も含まれる。実質的同一とは、公知発明の構成に対して周知・慣用技術の付加、削除、転換等であって新たな効果を奏するものではない場合をいう。
 インターネット等の通信網が発達し、J-PlatPatのような検索サイトに蓄積されたデータ量が相当ある今日では、同一発明が公知になっていないか、出願前に予めネットワークで調査することをお勧めしている。

弁理士 平井 善博

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