知財Q&Aコーナー(12)
Q:特許出願を行う際の「先行技術文献情報の開示制度」について教えて下さい。
A:「先行技術文献情報の開示制度」とは、平成14年9月1日から施行された改正特許法において導入された制度です。制度の概略としては、特許出願を行う際に、特許を受けようとする発明に関連する出願・文献等の先行技術(自らのものか他者のものかは問いません)について出願人が知っている情報(これを「先行技術文献情報」と呼びます)を、出願書類(明細書)に明示しなければならないという制度です。この制度は、出願人が知っている先行技術文献情報を自ら特許庁の審査官に開示することによって、より迅速かつ適確な審査の実現を図ることを目的として導入されました。この制度が導入された現行の特許法においては、先行技術文献情報の開示がない場合には、まず審査官から出願人に通知を行って開示が促されます。それでもなお開示がされない場合には出願が拒絶される扱いとなります。ただし、このような扱いは、該当する全てのケースに対して一律に適用される訳ではなく、審査官が必要と認めた場合にのみ行うこととされています。ここで、どの程度の情報を明示すべきかという点が疑問になろうかと思います。実務上は、その発明が解決しようとする課題を有していた従来技術を数件程度記載するのが標準的となっています。具体的には、公開特許公報等の番号を記載したうえで、その技術内容について記載します。なお、発明の技術分野によっては、関連すると思われる従来技術の公開特許公報等が非常に多く存在する場合もあるかとは思います。しかしながら、そのような場合でも、公開特許公報等を数十件、数百件といったレベルで記載しなければならないということはありません。
弁理士 岡村 隆志