知財関連コラム

特許実務雑感8

 物の発明にはプログラムも含まれる。制御ソフトや表計算等ソフトなどの場合、装置記憶部にインストールされるだけでなく、記録媒体に記憶させて取引されたり、通信回線を利用してダウンロードして利用されたりする取引形態が増えたことによる。もちろん、プログラムは制御手順を示すものである以上、方法の発明としても保護される。
 特に、コンピュータ端末とサーバーがインターネット等の通信回線により接続された出願において、双方が日本国内に存在するとは限らず、例えば外国に置いたサーバーを経由して通信するケースもある。この場合、例えばコンピュータ端末とサーバーが通信回線により接続された通信装置として権利化を図っても、日本国内ではコンピュータ端末のみを使用しているので、権利侵害行為の特定が困難になり、誰に対して権利行使をすればよいか難しい対応を迫られることになる。これに対して、通信方法の発明として権利化すれば、装置設備が国内にあろうがなかろうがその方法を使用している限り権利侵害となる。よって、端末使用者もサーバー事業者もその方法を使用する者であるので権利行使は可能である。
 また、過去にマスコミ等で取り上げられて話題となったビジネスモデル特許についても、最終的にはソフトウェアによる処理がハードウェア資源(演算部や記憶部等)の利用により実現されているか否かが産業上利用することができる発明に該当するか否かのポイントとなった。ビジネス手法そのものは、発明(特許法第2条1項)ではなく、単にインターネット等を利用したビジネス手法は発明であるが、社会インフラそのものであり権利化を図る社会的要請は存在せず、産業上利用することができる発明(特許法第29条1項柱書)に該当しないとの理由で拒絶されることが多い。

弁理士 平井 善博

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