特許実務雑感80
ドワンゴ対FC2事件の続きをお話しします。2つ目の論点はネットワークで接続されたサーバと端末のうちいずれかが国外設置された場合の特許権侵害の成否でした。判決では、ネットワーク型システム(サーバ+端末)の特許発明について、属地主義の原則の例外について、以下の4つの判断基準を示しました。(1)当該行為の具体的態様;国内のユーザ端末は、FC2動画のシステムにおいて特許発明の主要な機能(動画上に表示されるコメント同士が重ならない位置に表示される判定部の機能と表示位置制御部の機能)を果たしている。(2)当該システムを構成する各要素のうち国内に存在するものが当該発明において果たす機能・役割;FC2動画のシステムは、ユーザ端末を介して国内から利用することができるものであって、コメントを利用したコミュニケーションにおける娯楽性の向上という特許発明の効果は国内で発現している。(3)当該システムの利用によって当該発明の効果が得られる場所;FC2動画のシステムの国内における利用は、ドワンゴが特許発明に係るシステムを国内で利用して得る経済的利益に影響を及ぼし得る。(4)その利用が当該発明の特許権者の経済的利益に与える影響;米国に存在するサーバと国内のユーザ端末との間の送受信は一体として行われ、国内のユーザ端末が各ファイルを受信することによってFC2動画のシステムが完成することからすれば、上記送受信は国内で行われたものと観念することができる。判決ではネットワーク型システムの特許権侵害について、侵害者が国外にサーバを設置しても国内設置された端末からネットワーク型システムの主導的な役割を果たし、国内でビジネスとして収益を上げていた場合には、権利侵害が成立し得ることを示唆しています。
弁理士 平井 善博