知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(77)

Q:特許の出願書類における「要約書」は何のためにあるのでしょうか?

A:特許出願を行う際に、出願書類の一つとして「要約書」を添付することが規定されています。
 先ず、法の趣旨・制度について簡単に触れますと、特許法は「産業の発達」を目的とするものであり、その実現を図る手段として「出願公開制度」が設けられています。つまり、出願された発明内容を一定期間経過後に公開する訳ですが、特許の出願書類は「発明の技術的内容を開示する技術文献」としての役割と、「特許発明の権利範囲を定める権利書」としての役割を担っています。
 特に、「要約書」の存在意義はもっぱら技術情報として用いられることにあります。つまり、出願書類が担う役割であるところの「技術文献」としての活用を図るためのものです。
 具体的には、先行技術調査の際に、簡易にまとめられた「要約書」の記載を読むことによって、関係する発明を効率的に抽出する等の活用がなされます。
 このような目的のために、特許庁が定める「要約書」の形式として、「発明または考案の概要を平易な文章で簡潔に記載したものであり、一般の技術者が特許文献の調査の際に、その発明や考案の要点を速やかにかつ的確に判断できるように記載」すべき旨と、「400字以内で記載」すべき旨が定められています。
 その一方で、「要約書」自体は、権利範囲を定める基準として用いられることはありません。したがって、「要約書」を読む際の注意点として、発明の概要を把握する点においては便利ではあるものの、権利範囲の詳細確認を行う際には、「特許請求の範囲」や、「発明の詳細な説明」の記載に基づいて正確に把握する必要があることは言うまでもありません。

弁理士 岡村 隆志

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