知財関連コラム

特許実務雑感77

 拒絶査定不服審判の審決又は無効審判の審決(特許審決は除く)に不服がある場合には、さらに上級審で争うことが許されます。これが審決取消訴訟というもので、訴えは知財高裁に届け出ます。審決取消訴訟では、審決の妥当性、即ち、法令の解釈適用や審理手続きに瑕疵があったか否か等が争点として争われ、覆審といって、審判の審理すべてが見直されます。よって、例えば無効審判の審理で行われた請求人・被請求人の主張立証を再度やり直すことが必要になります。訴状や答弁書の提出のほかに、例えば無効理由に進歩性違反として当業者の常識が主張された場合には、技術的専門委員の立ち合いの元で技術説明会が開かれたりして弁論準備手続きが進められます。裁判官は理系の人が少なく、技術的背景を理解するために利用されることが多いようです。これが、原告及び被告にとって精神的にも肉体的にも負荷が大きく、消耗戦となるのですが、訴訟の審理は民事訴訟の手続や当事者主義(主張立証責任)が採用されるので、主張立証を尽くさないと裁判官の心証形成に影響を及ぼすおそれがあります。拒絶査定不服審判の拒絶審決に対して訴える場合には被告は誰になるかといえば特許庁長官です。実際には特許庁の審判部の代表者が被告となるようです。査定系審判でそこまで争った経験がないので何とも言えませんが、例えば大切な特許出願で是が非でも権利化したいと考える場合には、検討することも必要かもしれません。ちなみに審決取消訴訟では、訴状に訴訟の目的の価格に応じた印紙を貼る必要がありますが、その額をご存じでしょうか?知財事件の場合、訴訟の目的の価格は算定が困難であり一律に百六十万円とみなされます。よって、印紙代は一万三千円となります。

弁理士 平井 善博

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