知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(74)

Q:特許製品を修理する場合には権利者の承諾が必要でしょうか?
A:特許製品を特許権者から購入した後に、その製品を修理する場合に特許権者の承諾が必要となるのか、すなわち、無断で修理をすると侵害行為となるのかという点に関しては、注意する必要があります。
 先ず、前提として、特許権の「用尽」という考え方に触れておく必要があります。簡単に言いますと、特許権者もしくはその許諾を受けた者が特許製品を販売した場合、その時点で特許権が正当に用いられたこととなり(これを「用尽」と言います)、当該製品がその後、譲渡される等して使用者が変わったというような場合でもあって、特許権者はあらためて権利行使(例えば、使用の中止を求める等)を行うことができないという考え方です。
 この考え方が特許権の原則となっているため、正当に販売された製品を使用したり、その一環として修理したりする行為は、基本的に侵害となることはありません。
 しかしながら、特許部分の修理については、その内容と程度によって、侵害となってしまう場合があります。具体的には、過去の裁判において、特許部分を全面的に、あるいはそれに近い程度に取替えるような修理の場合には、もはや当該製品の「生産」と同一視することができるため、特許権の侵害行為に該当すると判断した判決等があります。
 したがって、特許製品に関しては、その修理の程度によって権利侵害となり得るケースがあることを知ったうえで、購入後も特許権の存在について注意を払う必要があります。なお、製品中の特許部分以外に関する修理であれば、明らかに特許権侵害とはならないことは言うまでもありません。

弁理士 岡村 隆志

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