知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(73)

Q:実用新案制度について教えて下さい。
A:産業財産権(旧工業所有権)四法と称される法律として、特許法、実用新案法、意匠法、商標法があります。
 元々、実用新案法は、日本が欧米諸国ほどの技術力を有していなかった明治時代に、自国で創造された簡単なアイディアに対して権利を付与することによりその保護を行うことを目的として、ドイツの法律を参考にして制定されました。
 その後、大正10年、昭和34年の改正を経て、日本の高度成長期に特許および実用新案の出願件数が飛躍的に増加したことから、昭和45年に特許法、実用新案法共に審査請求制度を導入して、権利化不要な出願に対して審査を行わないことにより審査期間を短縮する改正が行われました。
 その後は、権利期間等の面で保護が厚い特許法が技術保護の中心となり、実用新案法の需要が徐々に低下してきた経緯があります。
 そこで、平成5年に法改正を行い、ライフサイクルの短い製品を早期に保護することを狙いとして実用新案は無審査で登録される制度に移行しました。しかしながら、想定したほどの改正効果は得られず、むしろ権利行使の際の制約が増えたこと等を理由に、使いづらいとの批判が少なくなかったのも事実です。
 そのため、平成16年の法改正では、実用新案制度の魅力を高めるべく、
(1)権利期間を6年から10年に延長
(2)実用新案が登録された後に、これを基礎として特許出願できる制度の導入
(3)権利の訂正に関して許容範囲を拡大
(4)登録料等の料金を低額化
が実施されました。
 しかしながら、実用新案出願の件数は大幅な増加に転じることはなく、年間1万件に満たない件数で減少傾向にある状況です。

弁理士 岡村 隆志

トップへ戻る