知財関連コラム

特許実務雑感75

 今回から審判制度について説明します。特許性の有無の審査は、審査官一人の判断に委ねられるのですが、審査官による行政処分の妥当性を審判で争うことができます。審判は、3人又は5人の審判官の合議体で審理されます。審判には、書面審理を原則とする査定系審判と口頭審理を原則とする当事者系審判があります。査定系審判には拒絶査定不服審判・訂正審判があり、当事者系審判には無効審判があります。それぞれ利用する場面が異なり、審査官が下した拒絶査定に承服できない場合には拒絶査定不服審判を利用し、権利内容の訂正をする場合には訂正審判を利用し、特許権の有効性を争う場合には、無効審判を利用します。例えば審査官による拒絶査定に承服できない場合に、拒絶査定不服審判請求と同時に特許請求の範囲を補正すると、前置審査に係属します。前置審査は、拒絶査定を下した審査官が再度審査を行って拒絶査定を取り消して特許査定する機会を与えるものです。よって、審判の審理に行かなくても権利化できる場合があります。前置審査で審査官の心証が変わらない場合には、特許庁長官にその旨報告され、拒絶査定不服審判の審理に係属します。拒絶査定不服審判においては、補正する機会が必ずしも与えられるわけではないですが、審尋といって審判官から特許性についての心証を開示される場合があり、例えば拒絶理由が解消していない旨の心証に対して審判官に補正の用意があることを伝えることで、補正内容につき合意形成した後で、新たに拒絶理由を通知してもらい、意見書及び補正書を提出する機会を経て特許審決が得られることもあります。拒絶査定不服審判は審査の続審としての性格があるため、諦めなければ道が開ける場合があります。

弁理士 平井 善博

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