知財関連コラム

特許実務雑感60

 特許権侵害の警告書を送付し、相手方が話し合いに真摯に応ずることなく、しかも実施品Yの製造販売を継続する場合、侵害訴訟準備をすることになります。
 訴状には、請求の趣旨(何を求めるのか)請求の原因(請求に至った事実)と共に記載します。通常、第三者の現在から将来に向かっての侵害行為を止めたいのであれば、差止請求権(特100条)を行使することになります。差止請求権は、無体財産固有の救済規定です。特許権は無体財産権であり事実上の占有ができないことに基づくものです。差止請求をする場合、廃棄除却請求といって、侵害行為に寄与した生産設備や生産した侵害品を廃棄するように付帯請求することができます。また、特許権成立後、侵害品の出現により売り上げが落ちている場合には、本来得られたであろう利益(逸失利益)を損害額として損害賠償請求することができます(民709条)。損害賠償請求権は消滅時効があり、原則として不法行為より20年間請求できるのですが、加害者(侵害者)及び侵害の事実を知った時より3年間権利行使しないときには時効消滅します(民724条)。よって、3年前は行為を行っていたが現在は行っていないというときは、消滅時効により消滅する場合があります。侵害行為が継続していれば、このような問題は無くなります。損害賠償請求権とは別に或いは並行して不当利得返還請求権(民703条)を請求することもできます。これは法律上の原因なく他人の財産によって利益を受けた者に対して返還請求するもので不法行為より10年間請求できますので、損害賠償請求権が時効消滅した場合も請求することができます。また、信用回復の措置(特106条)といって、新聞紙上等に謝罪広告を求めることもできます

弁理士 平井 善博

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