知財関連コラム

特許実務雑感58

 特許権侵害の成立が確認できた場合、いきなり侵害訴訟を起こすことは稀であり、多くの場合は先ず侵害警告書が届きます。警告書と言う文面でなく、単に事実を通知する通知書と言う文面で受ける場合もあります。通常は第三者の受け取り確認が可能な内容証明郵便により通知される場合が多いです。なぜかと言うと、それ以降の実施は、第三者が侵害の事実を知りながら実施するいわば故意又は過失が成立するからです。弁護士さんに言わせると、内容証明郵便で書類を送る場合は、100%訴訟を意識した法律行為であると伺った記憶があります。警告書は、侵害訴訟(民事訴訟)の前提となりますので、弁理士のみならず、弁護士さんと連名で送られることが多いです。警告書の送り先は、実施品を製造販売等に関わる者(製造・販売メーカー等)全てとなります。理由は、侵害品を扱って利益を上げる行為(使用・製造・販売・貸渡す行為等)は個々に侵害行為に該当するからです(実施行為独立の原則)。ここで、警告書を送付したからと言って、需要者等に実施品は侵害品であると告知するような行動は控えたほうが無難です。理由は、侵害の事実が覆されると、不正競争防止法の営業妨害として逆に訴えられるおそれがあるからです。警告書に記載する文面には、権利者名と権利内容(特許番号及び特許請求の範囲)、対象製品となる被疑者実施品を特定するための製品名、型番等を記載します。対象製品が特定されていない場合、警告書を受け取った側も対象製品が何か不明であるため、場合によっては無視されることもあります。訴訟に先立って警告することで、話し合いにより解決(和解等)する場合も多く、権利者も時間と費用の節約になるため有効と考えられます。

弁理士 平井 善博

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